事実の概要
本件係争物件である水車発電機および附属機械器具は岡山県下の部落住民の一部(以下、一括してY1と称する)が共有し、A1、A2、A3、Bが管理し、これらの機械が収められている倉庫の鍵をBが所持していたところ、Y1の代表者としてのA1・A2・A3はB個人との間に本件物件の売買契約を結び、Bが期日までに代金を支払わないときは契約は無効となることを定めた。しかし、Bは期日までに代金を完済しなかった。その間、X(原告・控訴人・上告人)はBを本件物件の所有者と信じ、Bとの間に売買契約を締結して代金を支払い、占有改定によりその引渡しを受けた。ところが、その後、A1、A2、A3は、A1を単独代表者と定め、Bもこれに同意し、その所持していた鍵をA1に手渡し、その上で、A1はY2の仲介により本件物件をY3に売却し、代金全額を受け取った。後に、Xは本件物件の搬出を試みたが、Y1一同に阻止され、Y3がこれを持ち去った。そこで、Xは、Y1・Y2・Y3(被告・被控訴人・被上告人。以下「Yら」とする)に対し、本件物件の所有権の確認および引渡し(ならびに引渡不能のときは塡補賠償の支払)を請求したが、1審・2審ともこれを棄却した(なお、1審では、Bも共同原告としてYらに対して損害賠償を求め、棄却されたが、控訴していない)。原審は、Bの所有権取得を否定し、さらに、B・X間の本件物件引渡しは占有改定によるものであり、占有改定によるXの即時取得は認められないとした。X上告。民法192条にいう占有取得は178条に規定されている対抗要件としての引渡しに該当するものであるから、占有改定も192条にいう占有に含まれるべきであるとする。¶001