事実の概要
以下は原審認定事実による。昭和50年10月、大学教授の経歴を有する訴外Aが死亡した(相続人は妻X1および長女X2)が、Aの遺言によれば、全遺産はX1・X2およびYに各3分の1ずつ遺贈するものとされていた。Aは、X1とおおむね別々に生活するようになる少し前、昭和42年2月頃からYと交際を始め、昭和44年頃からは、AとYはA所有マンションに寝泊りするようになった(この頃、Yの存在はX1の知るところとなり、A・X1・Yで一緒に旅行することもあるなど、AとYの関係はなかば公然のものであった)。これ以降、Yは生活の資をもっぱらAに頼るようになり、こうしたいわば半同棲の関係はAの死亡時まで続いていたが、この間、A・Y間で喧嘩や別れ話なども時々あり、また、A・Y間で金銭的取決めがなされたこともあった。このような状況の中、昭和49年8月、Aは、当時Yの住んでいたマンションに来訪した際、急に遺言書を書くと言ってYに用紙をよこすように言い、Yが適当な用紙がないなどと言うと近くにあったノートを切り取って上記内容の遺言書を作成した。作成後、Aは、将来安心して生活できるだろうなどと述べながらYにその遺言書を手交し、Yがそのまま引出しに入れたところ、Aは、Yの銀行の金庫に入れておくように助言し、Yは言われるまま自分の銀行の金庫に預けた。その後、Yは、遺言書のことについてはさほど気にもとめずに、Aとの交際をA死亡時まで継続した。なお、X2は既に嫁いでおり、高等学校の講師などをしている。¶001