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事実の概要

宇奈月温泉は富山県の黒部渓谷に位置する温泉であるが、同温泉の湯は約7.5kmに及ぶ引湯管によって黒薙温泉から引かれていた。この引湯管は、大正6年頃に訴外Aによって約30万円の巨費を投じて完成されたものであったが、同温泉は大正13年には、宇奈月を終点として鉄道事業を営むY社(被告・被控訴人・被上告人)によって経営されるに至っていた。引湯管敷設のために、Aは、ある部分は有償で、ある部分は無償で、土地の利用権を獲得していたが、昭和3年に、X(原告・控訴人・上告人)は、引湯管がその一部(2坪ほどの部分)をかすめる本件係争地(3畝22歩=112坪)を訴外Bから買い受けて(Bはその前年に訴外Cから買い受けた)、Yに対して不法占拠を理由に引湯管の撤去を迫り、さもなくば周辺の荒蕪地と合わせて合計3000坪の土地を坪7円総額2万余円で買い取るよう要求した。Yがこれに応じなかったために、Xが所有権に基づく妨害排除を求めて訴訟を起こしたのが本件である。¶001