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Ⅰ はじめに

付加価値税(value added tax)としての消費税は、課税対象となる取引(消税4条)の対価の額を課税標準としてこれに税率を適用して得られた消費税額(消税28条・29条)から、納税義務者たる事業者の「事業として」行われた資産の譲受等すなわち「課税仕入れ」に係る支払対価に含まれる(はずの)消費税額を控除する。この仕入税額控除(消税30条)の仕組みこそが、(取引高税の欠陥であった)多段階課税の累積防止を旨とする付加価値税の「生命線」であり、同時に「アキレス腱」でもあると言われてきた1)。何らかの理由でこの仕入税額控除の仕組みが機能しないと、前段階の消費税額が累積し、後続段階の取引価格が歪められる。他方で、仕入先事業者が実際に消費税を納付していない場合にまで仕入税額控除を許してしまうと、国庫からの税収の漏出を許すことになる。このように、仕入税額控除は消費税を巡る様々な問題の中心に位置している2)¶001