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Ⅰ はじめに

本連載の第2回のテーマとして、海外企業とのM&Aを取り上げたい。日本企業が海外に進出する際に課題となるのは優秀な現地人材の確保であるが、現地企業を買収すれば、優秀な人材を組織ごと手に入れることができるうえ、経営陣が有する人脈も手に入れることができる可能性がある。このため、M&Aは、短期間で海外進出するための有効かつ効率的な手段である。¶001

一方で、言語・文化の違い、法制度の違い、情報の非対称性の問題があるため、海外企業とのM&Aは、日本企業同士のM&Aと比較して難易度が何倍も高い。そこで、本稿においては、海外企業とのM&Aの難易度を特に高める原因である情報の非対称性とその解消法について論じ、その後、海外企業とのM&A特有の法的問題について解説する。なお、海外企業の買収方法には様々な方法があるが、株式譲渡が最も多く利用される方法であるため、以下では株式取得により海外企業を買収する場合を念頭に置いて解説する。¶002