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はじめに
令和4年度の判例を概観するにあたり、判時2493号から2528号まで、および、判タ1489号から1500号までを主に参照した。必要に応じて裁判所ウェブサイト等に掲載されている判例も掲載した。もっとも、前年度までに紹介された裁判例は原則として割愛した。¶001
Ⅰ 判決手続関係
1 裁判所
法律上の争訟
奈良地判令和2・11・12(判時2512号70頁)は、被告との間で受信契約を締結している原告らが被告に対し、被告が原告らに対し、ニュース放送番組を、放送法4条を遵守して放送する義務があることの確認を求める訴えを提起した事案である。裁判所は、本件訴えは、原告らと被告との間における受信契約上の権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であり、これは法令を適用することにより判断し、これを終局的に解決することができるために、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たるとした。しかし、放送法4条に定める放送内容に関する義務は、放送に対して一般的抽象的に負担する義務であり、個々の受信契約者に被告に対して同条を遵守して放送することを求める法律上の権利ないし利益を付与したものではなく、また、被告に同条を遵守して放送する義務があることを確認する判決が確定しても、原告らは被告による任意の履行を期待するほかなく、上記判決の効力は、上記放送義務に関する紛争の解決に資するものとはいえず、個々の受信契約者に上記判決を求める法律上の利益があるとはいえない、として確認の訴えの利益を欠くとして不適法却下した。¶002