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事実

本件は、石綿含有建材から生ずる石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等にり患した建設作業従事者及びその遺族であるXら(原告・控訴人・上告人=被上告人)が、労働安全衛生法(以下、「安衛法」)に基づく規制権限をY(国─被告・被控訴人・被上告人=上告人)が行使しなかったことが違法であるとして国家賠償を請求するとともに(国賠1条1項)、石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売した建材メーカー6社に対し、民法719条に基づく損害賠償請求をした事案である。こうした訴訟は全国各地で提起されていたが、最高裁は、4つの訴訟(神奈川1陣訴訟、東京1陣訴訟、大阪1陣訴訟、京都1陣訴訟)について、令和3(2021)年5月17日にそれぞれ判断を示した。本評釈は、神奈川1陣訴訟に対する最高裁判決のうち、国家賠償責任法(以下、「国賠法」)上の責任に関する判断部分を取り上げるものである。¶001