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Ⅰ はじめに

「プロファイリングとプライバシー」が、編集部から筆者に与えられた論題である。しかし、このテーマについては、既に優れた論稿が多数存在するところ、筆者が新たに論稿を加えても屋上屋を架すことにならないのかという疑念がある。また、プロファイリングについては、プライバシー侵害のみならず、差別のリスクなども問題とされており1)、今このテーマを論じるのであれば、なぜプロファイリングが有する問題を他ならぬプライバシーとの関係で検討すべきなのか、プロファイリングの場面においてプライバシーの保護と差別の防止との関係はどのように理解されるべきなのか、問われなければならないだろう。そして、当のプライバシーの内容やその根底にある価値も、必ずしも明確なものではなく、近年ではその内容や価値について論争が激しくなっている2)。さらに、プロファイリングについては、我が国では主に個人情報保護法の改正や解釈・運用を通じた規律が試みられており、EUでも一般データ保護規則(GDPR)によりプロファイリングに対するデータ主体の権利が定められている。個人情報保護法やGDPRは一般にデータ保護法と呼ばれているが、データ保護法とプライバシーの関係も必ずしも十分には明らかにされていない。¶001