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Ⅰ はじめに

2022年6月23日にアメリカ連邦最高裁(以下、「最高裁」という)は、ニューヨーク州の銃規制に対して違憲判決を下した。アメリカでは銃犯罪が非常に多いので銃規制の必要性は大きいが、逆に自衛のために銃が必要だという考え方もあり、厳しい銃規制は政治的に困難である。厳格な銃規制が採用されても、訴訟で規制の有効性が争われる。最高裁は2008年に、自宅において正当防衛のために拳銃を所持する権利が保障されると判示した(District of Columbia v. Heller, 554 U.S. 570(2008))。合衆国憲法第2修正(以下、すべて「第○修正」という)が保障する武装権はその文言上民兵の文脈に限定されるという解釈が可能であったにもかかわらず、個人の権利として自宅において拳銃を所持する権利を認めたのである。Heller判決はコロンビア特別区の規制を対象とするものであったが、その趣旨は2年後の最高裁判決において第14修正のデュー・プロセス条項を通じて州(あるいは州の自治体)による同様の規制に対しても適用されることが明らかにされた(McDonald v. City of Chicago, 561 U.S. 742(2010))。¶001