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Ⅰ 福島第一原発国賠訴訟の概要

周知のとおり、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「本件地震」という)に伴う東京電力(以下「東電」という)福島第一原子力発電所(以下「本件発電所」という)の事故(以下「本件事故」という)に関して、全国各地で、東電や国を被告とした多数の訴訟が提起されている。これらの訴訟のうち、本件事故により放出された放射性物質によってその当時の居住地からの避難を余儀なくされた者らが、国に対し、国が津波による本件発電所の事故を防ぐために電気事業法(平成24年法律第47号による改正前のもの。以下同じ)に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であり、これにより損害を被ったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるなどした、いわゆる生業訴訟第1陣(下記③⑭判決)、群馬訴訟(同①⓰判決)、千葉訴訟第1陣(同❷⑰判決)、愛媛訴訟(同⑧㉑判決)の4件の訴訟について、令和4年6月17日、最高裁第二小法廷は、上記国家賠償請求を棄却する判決を下した。本稿が対象とするのは、これらの最高裁判決のうち、裁判所ウェブサイトに掲載されている、生業訴訟第1陣及び千葉訴訟第1陣に係る各判決(以下両判決を併せて「本判決」という)である。¶001