牧論文は、著名な鶴岡灯油最高裁判決の事案について、計量経済学の時系列分析をベクトル自己回帰(VAR)モデルにより行い、長年困難とされてきた原告消費者側の損害・損害額の立証可能性を示した点で、意義深い。VAR分析が対象とするのは、本件における卸売価格と小売価格のように相互依存関係にある変数であり、牧論文は、時系列データとして当時の灯油の月別価格データを用いて回帰分析し、価格協定が行われなかった場合の理論値=想定購入価格を推計し、また、卸売価格と小売価格のグレンジャー因果性を導いている。なお、牧論文にも説明されている通り、グレンジャー因果性自体は、先行する変数が他の変数を説明できるという相関関係を示すものに過ぎず、法的な因果関係からは距離がある点に注意が必要である。