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2022年春の大統領選挙と下院総選挙の重要争点であった購買力の保護を目的とした政府法案が同年8月3日に議会で可決された(翌日には、フランス電力会社の再国有化や公共放送負担税の廃止等を定める予算法律も可決)。ロシアによるウクライナ侵攻とその長期化によって欧州では天然ガスなどの化石燃料やその他の原材料が供給不足に陥り、物価の高騰が続いている。こうした事態への早急な対応が政府には求められていた。¶001

本法律ではまず、国民生活を保護するために様々な年金・手当の増額が決定された。2022年1月に1.1%引き上げられていた退職年金及び障害基礎年金、同年4月に1.8%引き上げられていた家族手当、積極的連帯所得手当(RSA)及び成人障害者手当(AAH)、その他、高齢者連帯手当(Aspa)及び(低所得就労者への)活動手当についても、2022年7月1日に遡って4%の引上げが行われた。また、家賃の値上げに対応するため、個人向け住宅手当(APL)が同じく2022年7月1日に遡って3.5%引き上げられるとともに、家賃上昇を最大3.5%に抑える措置が2023年6月30日まで実施される。AAHについては、配偶者又はそれに準じる同居者の収入基準が受給要件から削除された。従来、AAH対象者の収入と同居するパートナーの収入を合算して一定額を上回ると手当が減額又は停止されていたため、このような仕組みは障害者の自立を阻害するとして批判されていた。¶002