はじめに

放送事業については、このところ、「構造不況業種」と断ずるメディア評論家がいたり、YouTubeなど動画配信サービスが隆盛なことから、放送コンテンツについて「オワコン」(=終わったコンテンツ)と揶揄されることも増えているようだ。もちろん、放送事業における制度上の成り立ちの経緯や、報道機関として果たしてきた歴史的な経緯を考えれば、その社会的な役割を終えたとする声はさすがに見当たらないものの、2018年の年初に当時の安倍晋三首相が提起した「放送改革」は、大胆な放送制度の枠組みの見直しを志向したものだとされる。安倍首相が「放送改革」に関して何を意図していたのかについて、公式の場で内容を披露したことはなかったが、共同通信のスクープ報道によれば、民放事業をネット事業と同様の扱いとすることを念頭に、民放事業を既存の放送免許の制度から切り離すといった案も政権内部で浮上したようである。この問題について検討する立場にあった内閣府規制改革推進会議・投資等ワーキンググループでの議論では、共同通信の報じた内容ほど、ドラスティックではなかったものの、現行の放送制度上の規制を、大胆に緩和することを求め続けてきたことは確かであり、また、その経営環境の悪化から、放送事業者の側からも、放送制度に関して抜本的な緩和を議論すべき時期に来ていると主張する声があることも確かである。そのようなことからすれば、今の日本の放送制度の在り方が、大きな曲がり角に来ていることは確かだ。