Ⅰ. はじめに

敵対的企業買収に対する対抗措置(買収防衛策)は、平成17年~平成19年にその法的許容性に関する議論が急速に深められ、基本的な枠組みが形成された。その後は、裁判例等で問題となることがあまりなく、議論は進展しないままであった。しかし、令和3年になって、買収防衛策の導入・発動の法的許容性を争う重要な裁判例が立て続けに現れ、再び買収防衛策に関する議論が活発化している。近年、わが国の上場会社に対し、敵対的企業買収が試みられることが増え、買収防衛策の導入・発動で対抗する例が多くなってきたことがこの背景にある。そのため、一連の裁判例は、わが国の企業買収法制の検討にとって極めて重要な意義を有する。また、買収防衛策は、機関権限の分配や株主平等の原則など、会社法制の基本的ルールとの関係が問題となるため、会社法制全体に影響を与える部分も大きい。本稿では、東京機械製作所事件が提起した法律問題を検討して、その司法判断の理論的基礎を探る。まず、東京機械製作所事件の事案と判旨を簡単に紹介し()、東京機械製作所事件決定の持つ意義を解説する()。その上で、同決定が提起した法律問題の検討を行う()。