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Ⅰ. はじめに

株式会社は株主総会の招集に当たって、株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができる旨を定めることができ、また、株主の数が1000人以上である場合にはこの旨を定めなければならない(書面投票。会社298条1項3号・2項)。このほか、株主は代理人によって議決権を行使することができる(会社310条)から、会社が株主に対して委任状を勧誘する場合には、株主は委任状を会社に返送することで代理人を通じて議決権を行使することができる。上場会社において委任状を勧誘する場合には、委任状用紙は議案ごとに賛否を明記する形式のものが採用される(金商令36条の2第5項、委任状43条)。これらの方法で議決権行使や代理権の授与を行った株主が株主総会に実際に出席した場合、書面投票であれば当該投票は無効となり(会社298条1項3号が「出席しない株主」による書面投票を予定していることの帰結である)、また、委任状の提出の場合であれば、当該委任状は撤回されたものと扱われる(そのような株主の意思が合理的に推認されることによる。大隅健一郎ほか「株主総会」ジュリ87号47頁[大森忠夫発言、大隅発言])。¶001