ドイツでは、2021年9月に行われた連邦議会選挙の結果、社会民主党(SPD)が第1党となり、緑の党・自由民主党(FDP)との連立政権が誕生した。連立にあたっては、政権運営にあたっての方針を定めた協定が締結された。

連立協定は、生活保障(日本の生活保護に相当)について、現行の求職者基礎保障制度に代えて、「市民手当(Bürgergeld)」を導入するとしている。この「市民手当」とは、“citizen’s income”の言い換えであり、通常はいわゆる「ベーシック・インカム(Grundeinkommen、以下「BI」)」に相当するものと考えられる。そこから、当初BI制も視野に入っているのかと話題になった。なぜなら、メルケル前政権時代から労働・社会大臣を務めるフベルトゥス・ハイル(SPD)が、コストのかかる資産調査を恒久的に廃止したい意向を示していたからである。彼はすでに現行法制下で、新型コロナ禍を理由に、ジョブセンターに対して資産調査や住居の適切性に関する調査を取りやめるよう指示していた。それにより、生活保障給付金の支給にあたって、アパートの広さや6万ユーロまでの貯蓄の有無はチェックされず、部分的にはBI的な運用がなされていた。その意味で、今回の連立協定の内容は、これまでの流れに沿うものといえる。当時、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)はハイルの構想に対して強く反対していたが、今回の政権移行により、「市民手当」の導入に向けて進んでいくものと思われる。