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Ⅰ. はじめに

本稿では、電子契約やスマートコントラクトが契約法との関係で提起しうる問題点を抽出し、その分析を行うことを目的とする。¶001

ここでまず、電子契約やスマートコントラクトの定義を確認し、本稿で検討する対象の絞り込みを行おう。¶002

電子契約とは、狭い意味では、(a)電子署名が行われた電子文書で証明される契約である。ここでは、電子署名がされた電子文書については、押印した契約書と同様の効力があるところ(電子署名及び認証業務に関する法律〔以下、「電子署名法」〕3条)、これにより文書の成立の真正が認められるという意味を持つ(民訴228条1項・4項)。より広い意味では、スマートコントラクトとの差として、(b)契約締結の場面を電子化や自動化する一切のものを含むのかもしれない。ただ、この(b)の契約締結の場面の電子化・自動化については、錯誤のように特別法で対処されている部分もあり、――別稿で提示したAIによる契約締結と定型約款規制に関する問題を除けば1)――興味深い問題は多くないかもしれない2)。また、電子化と自動化という言葉を分けることにより示唆したように、自動化はたとえばロボットのような物理媒体でも生じうる現象であって、電子契約特有の特徴ではあるまい3)。そこで、本稿では(b)はあまり扱わず、(a)や電子メールで証明できる契約など証明と関連しそうな問題に焦点を絞ることにする。¶003