Ⅰ. サイバー犯罪と伝統的な犯罪

サイバーセキュリティの維持・向上のためには、サイバー攻撃の手口を知る必要がある。当罰的なサイバー攻撃はもちろん処罰されるべきであるが、強窃盗等の伝統的な犯罪と異なって、サイバー犯罪は情報技術の知識を駆使して実行され、手口を知ること自体が一苦労である上に、その更新も頻繁である。大声で脅迫する、刃物を突きつけるといった行為と異なり、デジタルデータを処理するだけで完結でき、五感に直接訴えかける一部の伝統的な犯罪がもつ迫力もない。こうした五感への訴えかけが行為に対する当罰性判断にとって本能的に重要な考慮要素だった、とすれば、それがサイバー攻撃には欠けている。サイバー攻撃の当罰性は、物理的空間で感じる恐怖等の感覚的な判断を基礎に置かない観念的なものを中心に判断される。当該サイバー攻撃がもたらしている社会的な被害や当該サイバー攻撃が有する技術的性質から演繹するような形で、論理的に判断されるわけである。技術的な知識がないと恐怖感さえわかないかもしれない。