令和4年2月15日、最高裁判所は大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例(以下「本件条例」)の2条、5条ないし10条に就き合憲の判断を下した(最三小判令和4・2・15裁判所Web〔令和3年(行ツ)第54号〕)。本稿は、本判決に就て若干のコメントを試みるものである。尚、本稿は厳密・網羅的な判例評釈として執筆されたものではない。又、紙幅の都合により文献に関する注は最小限にとどめている。

Ⅰ. 事案の概要

原告ら(控訴人・上告人)は大阪市の住民、被告(被控訴人・被上告人)は大阪市の執行機関たる市長である。原告らは被告に対し、住民監査請求を経て、地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟を提起した。その理由は、大阪市市民局総務課長が本件条例を実施するために行った支出命令のうち、本件条例に基づき設置された大阪市ヘイトスピーチ審査会の委員に対する報酬を支出すべきものとした部分、及び本件条例に基づく調査等に要した郵便料金を支出すべきものとした部分、が違法だというものである。その際、原告らは、本件条例が憲法21条1項等に違反する旨を主張していた。