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事実の概要

X(原告・控訴人・被上告人)は、営んでいる砂利採取運搬業のため妻Aに会計事務などを担当させ、AがXの印鑑を預かり、Xの指示により、その印鑑を使用してX名義の取引書類を作成し、また、Xが裏書欄に署名してからAのもとに送付してきた受取手形について、その裏書欄のX名下にXの印鑑を押捺したうえ、これを取引銀行であるY(被告・被控訴人・上告人)のS支店に持参して手形割引をしてもらったり、関係業者に対し債務弁済のため交付したりしていた。ところが、AはXの弟Bから「世話のない手形に使用するものであり、迷惑をかけない」といわれて、Bが権限なくしてXの印鑑を用いてX名義で手形行為をすることを知りながら、Bに対しXの印鑑を貸し渡した。そこで、Bは約束手形(本件手形)の振出人欄にXの住所氏名を冒書し、その名下にXの印鑑を冒捺してその印影を顕出し、Cに対しそれが真正に作成された手形であるかのごとく装って交付した。Yは、Cから手形割引により本件手形を取得した。XとYとの間の金銭の手形貸付、手形割引等の与信取引に適用される相互銀行取引約定書(以下、「約定書」)10条4項(以下、「本条項」)は、「手形、証書に押捺された印影を、私(X)の届け出た印鑑に、相当の注意をもって照合し、相違ないと認めて取引されたときは、手形、証書、印章について偽造、変造、盗用等の事故があってもこれによって生じた損害は私(X)の負担とし、手形または証書の記載文言にしたがって責任を負います」と規定していた。Xが、Yに対し当座預金の払戻しを求めて訴えを提起したので、本条項に基づきYは本件手形債権をXに対して有しており、当該債権と本件預金債務とを対当額で相殺するとの抗弁をYは提出した。第1審判決(大分地佐伯支判昭和56・12・18民集41巻5号〔参〕1365頁)は、XはBの振出行為を追認したと認定し、Xの請求を棄却した。原判決(福岡高宮崎支判昭和58・8・10同民集〔参〕1368頁)は、表見代理および使用者責任の成立を認めず、かつ、第三者との取引により取得した偽造手形につき本条項を適用すると、手形の偽造行為につきXの帰責事由の有無にかかわらずたまたまYが偽造手形を取得すると手形上の責任を含め一切の責任をXが負担する結果となり合理性を欠くから、本件手形には本条項の適用はないとして、第1審判決を取り消し、Xの請求を認容した。そこで、手形の取引のない支店または本店で呈示された場合に「取引のある支店まで当該手形を持参して照合する手続をすることは不可能である」から、本条項は、「最終的に当該手形を受取った取引のある支店において照合し、その手形に取引印が押捺されていれば当該銀行が免責されると解すべきであ」るなどとしてYが上告。¶001