事実の概要
本件は、X(被告会社)が架空造成費を計上して所得を秘匿し、法人税を過少申告したとして法人税法違反で起訴された事案であり、Xが架空の造成工事に関する見積書等を提出するなどした脱税工作の協力者に支払った「手数料」がXの法人所得計算上、損金算入されるか否かが争点となったものである。¶001
第1審(東京地判昭和62・12・15判時1272号154頁)は、以下のように「手数料」の損金性を否定した。¶002
(1)
Xが「支払った手数料なるものは、……販売用土地の仕入原価を構成するものとされているが、右部分が法人税法22条3項1号所定の原価に含まれないことは多言を要しないし、また同項2号の費用とは、事業活動との直接的関連性を有し、事業遂行上必要なものに限られるべきであるから、本件の手数料のように事業遂行上必要とはいえないものは、右の費用に含まれないものといわなければならない」。仮に脱税工作のための支払が「広義において事業との関連性を有するもので、事業遂行上必要な費用であるとの会計慣行が存するとすれば、それは法人税法が課税所得の計算に関し容認する公正妥当な会計処理の基準とはとうていなり得ないものといわなければならない。そもそも法人税法は、わが国法人税に関する基本法であって、法人税に関するすべての納税義務者が、同法の定めるところに従って誠実に納税義務を履行するよう期待し、不正行為によって法人税を免れる行為を刑罰をもって禁遏しているのであるから、法人税法は、右不正行為を行うこと及びこれにからむ費用を支出すること自体を禁止しているものと解すべく、したがって、法人が右のような費用を支出しても、法人の費用としては容認しない態度を明らかにしているものと解すべきである。そして、かかる不正行為への協力者は概ね法人役員等の脱税の共犯となるものであり、……脱税協力者に手数料等の名目で報酬を支払ったとしても、それは実質的にみれば、共犯者間の利益の分配にほかならないのであるから、……明文の禁止規定がないからといって、これを法人の費用として損金に計上することを認容することは法解釈の矛盾といわなければならない」。また、法人税法22条3項の「損失とは企業会計上は一般に企業活動において、通常の活動とは無関係に発生する臨時的ないしは予測困難な原因に基づき発生する純資産の減少をいうものと解され」、当該手数料のように「実質上脱税協力報酬として法人外に流出した金員の如きは、右の通常の意味における損失には含まれないものと解される。かりに、企業会計上の損失概念を右よりも広義に解し、すべての臨時的な純資産の減少を含ましめる会計慣行が存在するとすれば、それは公正妥当な会計処理の基準として法人税法の容認するところではない」。¶003