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Ⅰ はじめに

人身傷害保険は、任意自動車保険に付帯される傷害保険であり、自動車事故から生ずる被保険者の身体傷害による損害に対して人身傷害保険金を支払うものであるが、約款条項の内容が複雑であることから様々な法律問題が生じている1)¶001

最高裁令和7年10月30日判決(民集79巻7号2794頁。以下「本判決」という)は、被保険者が死亡した場合の人身傷害保険金について、請求権の帰属の問題および近親者固有の精神的損害と被保険者の精神的損害との保険金額調整の要否に関して判示した初めての最高裁判決である。前者の請求権の帰属の問題は、かねてから盛んに議論されてきた論点であり、本稿の筆者も別稿で詳細に論じたことがある2)。これに対し、後者の保険金額調整の要否は、これまであまり議論されてこなかった論点である。¶002