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Ⅰ 総説

2025年6月に、EU(欧州連合)が「EU宇宙法案」(以下「本法案」といい、本稿において条数のみの場合は本法案を指す)1)を公表し、日本でも宇宙関係者の間でさまざまな反響を呼んでいる。本稿は、宇宙ビジネスの進展と法制度のかかわりについて研究してきた研究者グループが、本法案の概要を紹介するとともに、日本から見たその意義や問題点を指摘するものである。¶001

はじめに、本法案を欧州における宇宙開発の展開に位置付けておこう。歴史的に欧州では、欧州宇宙機関(ESA)という国際組織を通じて宇宙開発の規模を確保する政策が採られ、EUは宇宙開発に関与してこなかった。しかし、巨額の予算を要するグローバルな測位衛星システムGalileoをEUとESAの共同プロジェクトとしたことをきっかけに、宇宙開発はEUにとっても政策領域の一つとなり、現在ではEU機能条約にも宇宙政策が明記されている(同条約189条)。2021年には規則2021/696号により7カ年にわたるEUの宇宙プログラムが定められ、欧州GNSS監督庁を改組した欧州宇宙計画庁(European Union Agency for the Space Programme:EUSPA)がその実施にあたることとされた2)¶002