本判決は、男子の髪形を「丸刈、長髪禁止」と規定した公立中学校の校則が、憲法14条、31条、21条に反せず、裁量権を逸脱して違法ともいえないと判断したものである。下級審判決ではあるが、以後の丸刈校則廃止の流れの嚆矢となった事件であり、その意義は大きい。
事案は、公立中学校の男子生徒であるXが、本件校則により損害を被ったとして、損害賠償を請求したというものである。本判決は、①憲法14条との関連では、「校則は各中学校において独自に判断して定められるべきもの」だから、住居地により差別的取扱いを受けたとしても合理的な差別であり、「男性と女性とでは髪形について異なる慣習があ」るから、性別による差別にも当たらない、②憲法31条との関連では、本件校則違反の効果として「強制的に頭髪を切除する旨の規定はなく」、そうすることも予定していなかったとして、違反の主張は前提を欠く、③憲法21条との関連では、「中学生において髪形が思想等の表現であると見られる場合は極めて希有である」ことを理由に違反の主張を退けている。また、④裁量権の逸脱の主張については、校則が「教育を目的として定められたものである場合には、その内容が著しく不合理でない限り、右校則は違法とはならない」とした上で、「丸刈の社会的許容性や本件校則の運用」に照らすと、本件校則は著しく不合理とはいえないとし、Xの請求を棄却した(確定)。