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Ⅰ はじめに

特許権に関し、その効力は、当該特許を付与した国の領域内に限って認められるという属地主義の原則が当てはまることが、国際的に広く認められている。そこで、国境をまたがる行為によって特許権侵害が成立するかという問題は、古くから論じられてきた。特に、1990年代以降、経済活動のグローバル化やインターネットの発達等によって、上記問題の重要性が増し、欧米では裁判例も蓄積してきている1)¶001

そのような中、ネットワーク関連発明に係る我が国の特許権との関係で、外国に所在するサーバを利用する行為による同特許権の侵害の成否を主要な争点とする事件が現れ、大きな注目を集めた。同事件は、同一の当事者間における、異なる特許権を対象とする2つの事件(以下、あわせて「本件2事件」という)であり、いずれについても令和7年3月3日に最高裁判決が出された。本稿では、それらの最高裁判決の意義に関し、主として理論的側面から検討する。¶002