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2024年1月29日、人気漫画『セクシー田中さん』の作者である芦原妃名子氏が逝去した。前年秋より、この漫画を原作とした実写ドラマがTV放送されていた。そのドラマの制作過程において苦悩があったことを脚本家および原作者の双方がSNSにおいて吐露した直後の訃報であった。本稿は、この事案を重く受け止め、作品のメディア展開の現場における課題について、著作者人格権の観点から検討を行うものである。¶001

芦原妃名子氏(以下、「芦原氏」という)による漫画『セクシー田中さん』(以下、「本件漫画」という)のTVドラマ化をめぐる事実関係については、2017年9月号から2024年1月号まで「姉系プチコミック」に本件漫画を連載した株式会社小学館(以下、「小学館」という)の〈特別調査委員会〉による「調査報告書(公表版)」(2024年6月3日)(以下、「小学館報告書」という)および本件漫画をTVドラマ化し2023年10月22日から12月24日にかけて全10回の連続ドラマ(以下、「本件ドラマ」という)として放送した日本テレビ放送網株式会社(以下、「日本テレビ」という)の〈社内特別調査チーム〉による「『セクシー田中さん』調査報告書(公表版)」(2024年5月31日)(以下、「日本テレビ報告書」という)を参考にされたい。本稿における事案の概要は、芦原氏の代理をつとめた小学館による「事案の概要」(小学館報告書1頁~2頁)から直接引用することとする。引用部分の内容については、日本テレビ報告書における事案の概要説明および筆者が目撃した芦原氏と脚本家の相沢友子氏(以下、「相沢氏」という)によるSNS等への投稿と大きな齟齬はないものと判断した。なお、小学館報告書からの引用にあたり「(以下「○○○」)」の表記を筆者において削除した。引用中の「X」はSNSプラットフォームの名称である。¶002