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事実の概要

X(原告・控訴人・上告人)は、昭和34年9月7日、Y保険会社(被告・被控訴人・被上告人)との間で、X所有の汽船甲丸を目的とする海上船舶保険契約を締結した。甲丸は、総トン数405トン余りの普通貨物船であったが、川崎港においてドロマイト500トンを積載した上、無人かつ未修理の難破船乙丸を曳船して航海中、昭和35年3月28日、静岡県御前崎沖で暗礁に乗り上げて破砕し、全損に帰した。¶001

甲丸が乙丸を曳船するに至った経緯は次のとおりである。甲丸船長Aは、川崎港を出港するに際し、同船の定期傭船者であるB海運商会の代理店Cから、乙丸を愛媛県今治市まで曳船するよう依頼を受けた。Aは、甲丸の運行に関するXの事務を代行していたD汽船会社の承諾を得るべく電話をしたが、同社の代表者が不在でその明確な承諾を得ることができなかったものの、船主たるXも了解済みと思い、曳船の依頼を承諾した。¶002