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事実の概要

荷主X(上告人)は、訴外A会社の汽船(福岡丸)で貨物(砂糖5000袋)を海上運送するにあたり、保険会社Y(被上告人)との間で貨物の海上保険契約を締結した。この契約では、保険者たるYが、保険貨物に生じる全ての海上危険について塡補責任を負うこと、不可抗力によらない損害と船員の重過失による損害については免責されることが特約されていた。本件貨物は、福岡丸の第1艙内に積載され、台湾の打狗港(現在の高雄港)から横浜港に運送された。同船が、同港での貨物の陸揚げにあたり、喫水の調整をするため、船底にあるバラストタンクを満水にする目的で注水作業を行っており、その際に、バラストタンクに接続する測水管の下部に破損箇所があり、そこから船艙内に海水が侵入し、本件貨物の一部が溶解した。そこでXがYに対して、本件貨物に生じた損害について保険金の支払を求めて提訴したのが本件である。原審(東京控判大正元・10・19新聞839号21頁)は、測水管の破損による海水の侵入は、船舶の設備不完全を原因とする普通の危険であって海上危険ではなく、また、本件貨物の損害は、不可抗力によるものではないと判示してYの塡補責任を否定した。Xはこれを不服として上告。¶001