事実の概要
本件火災は、阪神・淡路大震災が発生した平成7年1月17日午前5時46分から約8時間経過した午後2時頃に発生したもので、神戸市東灘区所在のS店の店舗から不審火により出火し、これが延焼・拡大して本件建物および家財を含む85棟等が全焼した。本件火災が鎮圧されたのは、地震による消火能力の低下により、翌18日午前10時頃であった。¶001
X1およびX2(原告・控訴人・被上告人)ら(その総数は55名)は、Y社(被告・被控訴人・上告人)ら(その総数は13社)に対し、火災保険金等請求訴訟を提起した。その請求は、(1)主位的請求として、地震免責条項の適用を否定して火災保険金の支払を求め、(2)予備的請求その1として、火災保険契約締結にあたって、地震保険を附帯しない旨の有効な申出をしていないから、損害保険会社と保険契約者の間で地震保険契約が締結されたとして地震保険金の支払を求め、(3)予備的請求その2として、本件地震保険に関する事項について情報提供や説明すべき義務があったにもかかわらずこれを怠ったので、「保険募集の取締に関する法律」(平成7年法律105号による廃止前のもの。以下、旧募取法とする)11条1項(現行保険業法283条1項)、不法行為、債務不履行または契約締結上の過失に基づき、財産上の損害賠償として火災保険金相当額の支払または地震保険金相当額から地震保険料相当額を控除した差額金の支払を求めた。これに対し、第一審の神戸地裁は、原告3名については、地震免責条項の適用を一部否定して火災保険金の支払を命じたが、それ以外の原告52名のすべての請求を棄却した。¶002