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Ⅰ 事実

X(原告・被控訴人・被上告人)は、昭和44年に放送法による基幹放送事業等を目的とする株式会社Y1(被告・控訴人・上告人)に入社し、昭和63年に取締役に就任した後、常務取締役・専務取締役を経て、平成16年6月から平成29年6月までの間、代表取締役を務めていた。Xは代表取締役在任中以下の行為を行った。第1に、Xは、取締役会の委任を受けて代表取締役として平成28年度の自身の報酬を決定にするにあたり、前年度より2300万円余増額し、退任まで増額された報酬を受領した。これは、Xが長期間にわたりY1社から内規で定められた上限額を超える額の宿泊費等を受領し、発覚後、いったん負担した当該超過分に係る源泉徴収税相当額をY1社に転嫁するとともに、内規に違反する宿泊費等の支給を実質的に永続化する目的でなされたものであった(以下、「本件行為1」という)。本件行為1は、新聞等で取り上げられ、社会一般に知れ渡った。第2に、Xは、平成25年度から平成28年度の各年度において、交際費として、平成24年度の額を大幅に超過する額(合計1億円余)をY1社に支出させるとともに、Y1社の海外旅費規程を改定し、平成24年から平成28年までの間、Xの出張に伴う支度金として、改定前の海外旅費規程によるよりも約545万円多い額をY1社に支出させた(以下、「本件行為2」という)。第3に、Xは、平成26年度から平成28年度までの間、文化芸術活動の支援事業等の費用をY1社に支出させた(以下、「本件行為3」といい、本件行為1および2と併せて「本件各行為」という)。¶001