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Ⅰ はじめに

平成16年改正前の年金制度においては、各年度の年金額は、全国消費者物価指数(以下では単に「物価指数」とする)によりスライドするものとされていた。このような制度の下で、平成11年から同13年にかけて物価指数がマイナスとなったが、特例法の制定によって、平成12年度から同14年度の年金額は維持された。その結果、年金額は、特例法を前提としない本来の水準(以下では「本来水準」とする)を1.7%上回る水準となった(以下では、この措置を契機に生じた本来水準を上回る水準を「特例水準」とする)。その後、特例水準は解消されず、むしろ、平成16年改正法による年金額のスライドの影響により、本来水準と特例水準との乖離は2.5%となっていた。このような状況を受けて、平成24年改正法は、平成25年度から同27年度にかけて、特例水準を解消するための年金減額を行った。同改正による年金減額をめぐっては、憲法25条・29条への違反などを理由として減額改定に関する決定の取消しを求める訴訟が提起され、令和5年12月15日に、最高裁が、同種の事案における最初の判断を示した(最判令和5・12・15裁判所Web〔令和4年(行ツ)第275号〕。以下では「本判決」とする)。¶001