((1)より続く)¶001
Ⅲ 日本法の事例と検討
1 プレゼンテーション
平澤次に、日本法の事例について検討したいと思います。日本では、パロディ商標の登録が争われた場面については、裁判例が多数存在します。これに対して、商標権侵害や不正競争防止法の不正競争行為が争われた侵害訴訟の事案は非常に少ない状況です。公刊されている判決としては、東京地裁の「バターはどこへ溶けた?」事件1)があるという程度かと思います。¶002
まず、商標権侵害・不正競争行為が争われる侵害訴訟の場面と、商標登録が争われる場面とは、どのように違うのかを少し検討したいと思います。先ほど(本連載第24回)の表現の自由がより直接的に問題となるのは、侵害訴訟であると考えています。というのも、商標権侵害訴訟などで仮に被告に対する差止請求が認められた場合には、被告のパロディ商標の表示は使用できなくなるため、その意味では表現が直接制約されることになります。他方で、商標登録の場面に関しては、仮に登録が認められなかったとしても、登録なしで使用するということは十分考えられますので、直ちに表現の自由の制約にはならない。そのような違いがあると考えられます。¶003