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事実の概要

本決定は、新宿騒乱事件の上告審決定である。同事件は、昭和43年10月21日の国際反戦デーに、被告人ら15名を含む学生と群衆等数千名が、新宿駅周辺で集団示威運動を行ったうえ駅構内に侵入占拠し、投石や放火等の暴行を繰り返して、多数の警察官に傷害を負わせ、電車や駅設備等を破壊したことで、駅構内や周辺地域一帯を混乱に陥れ、多数の警察官・住民等に不安と恐怖を生じさせた事件である。¶001

第1審(東京地判昭和52・9・13刑集〔参〕38巻12号3186頁)において、検察官は、事件当日の駅構内およびその周辺における学生と群衆の行動状況を撮影した現場写真(写真帳10通に収められた写真と、別途の拡大写真)を、犯行状況を立証するために証拠調べ請求した。写真は現場で現行犯逮捕されたアマチュアカメラマンらから未現像フィルムを差押え・領置したうえで警察官が現像・焼付したものであったが、拡大写真は、証人として尋問された警察官が公務員の職務上の秘密を理由に証言拒絶した(刑訴144条)ため、写真の撮影者・入手経路や撮影に関する諸条件等の詳細が明らかにならなかった。弁護人は、写真は供述証拠であり、刑訴法321条3項準用あるいは同条1項3号類推適用をする必要があるとして、証拠能力を争った。第1審判決は、現場写真は非供述証拠であるとして事件との関連性を認めて証拠能力を肯定し、被告人ら15名を有罪とした。被告人側が控訴(3名は控訴せず、2名は控訴取下げ)。¶002