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Ⅰ 社会と性別

1 法の中の性別1)

2023(令和5)年10月25日、最高裁大法廷は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(平成15年法律第111号。以下、「特例法」)の3条1項4号(以下、「生殖能力喪失要件」)が憲法13条に違反するとの決定2)を全員一致で下した(裁時1826号37頁、裁判所Web)。本稿では、この決定を手掛かりにして、日本社会における法的性別のあり方について、いくつかの論点を検討してみたい。その際、今回の違憲決定については、単純な称賛や非難という対応ではなく、いわばボールが最高裁から立法府と有権者に投げかけられたことを深刻に受け止めるという対応が望ましいのではないだろうか、という視点で考察してみたい。¶001