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本件は、市が発注したごみ焼却施設建設工事の指名競争入札において、Yらによる談合により不当に高い価格で落札・受注され、市がYらに対して損害賠償請求権を有しているにもかかわらず、市長がその行使を違法に怠っているとして、Xら(市の住民)が市に代位してYらに対して損害賠償を求めた旧4号請求住民訴訟の事案である。本判決は、①地方公共団体の長には客観的に存在する債権の行使または不行使についての裁量がないこと(最判平成16・4・23民集58巻4号892頁―本書110事件)を確認したうえで、②「地方公共団体の長が債権の存在をおよそ認識し得ないような場合にまでその行使を義務付けることはできない上、不法行為に基づく損害賠償請求権は、債権の存否自体が必ずしも明らかではない場合が多いことからすると、その不行使が違法な怠る事実に当たるというためには、少なくとも、客観的に見て不法行為の成立を認定するに足りる証拠資料を地方公共団体の長が入手し、又は入手し得たことを要するものというべきである」と述べた。本件では、市長も第1審において当初は被告とされており、その証拠資料としてYらによる独占禁止法違反の事実を認定した審決の審決書等が提出されていたことから、当該証拠資料からYらによる不法行為の事実が認定され得るのであれば②の条件を満たすとされ、差戻審においてその旨が認定されて請求が認容された。

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