事実の概要
昭和55年6月4日、千葉県浦安町(昭和56年からは浦安市)を流れる境川に、ヨット係留用の鉄杭約100本(本件鉄杭)が約750 mにわたってAヨットクラブにより打ち込まれているのが発見された。境川は、河川法適用の1級河川であり千葉県知事が管理をするとともに、浦安漁港の水域に含まれており、漁港法(平成13年法律92号による改正により現在では漁港漁場整備法)に基づき浦安町が漁港管理者として維持管理を行っている。本件鉄杭は、河川法および漁港法に基づく許可を得ておらず、違法に設置されたものであった。しかも、本件鉄杭によって、船舶の航行できる水路は水深の浅い左岸側だけになってしまい、漁船などの船舶にとって非常に危険な状況であった。そこで、町は、建設会社との間で本件鉄杭の撤去工事の請負契約を締結し、同月6日、これを撤去した。浦安町長Y(被告・控訴人・上告人=附帯被上告人)は、建設会社に対し、工事請負代金130万円を支払った。これに対して、浦安町の住民であるX(原告・被控訴人・被上告人=附帯上告人)が、本件請負契約の締結等は違法であり、したがってYが請負代金等を公金から支出させたことは違法であると主張し、浦安町に代位して、Yに対し、損害賠償を求める住民訴訟を提起した(旧4号請求)。Xは、漁港法26条によると、漁港管理者は「漁港管理規程」を制定し(実際には条例の形式がとられる)、これに従い漁港の維持管理をすべきと定められているところ、本件当時、浦安町はこの規程を制定していなかったため、本件鉄杭の撤去は法律上の根拠に基づかない違法な行為であると主張した。Yは、本件鉄杭の撤去はやむを得ない緊急避難的措置として許容されるべきものであると反論した。¶001