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事実の概要

X(原告・控訴人・被上告人)は自己の所有する建物およびその敷地(本件不動産)をY(被告・被控訴人・上告人)に売却し、所有権移転登記を経た。その後、Xは、詐欺を理由に売買契約を取り消したと主張して、土地建物の所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えを提起した。これが本件訴えである。これに対抗して、Yも、Xに対し、売買契約の履行として建物の明渡しおよび契約不履行を理由とする損害賠償としての金銭支払を求める新たな訴えを提起した(別件訴訟)。新堂幸司「争点効を否定した最高裁判決の残したもの」同『訴訟物と争点効(上)』[1988]269頁以下によれば、第一審裁判所は、両請求につき、同日同じ裁判官の下で、いずれの請求についてもY勝訴の判決を言い渡した。両判決に対してXが控訴したところ、控訴審では別々の部にそれぞれの事件が係属したが、先に判決に熟したYの明渡請求(別件訴訟)につき、Xの詐欺を理由とする売買契約の取消しの主張が排斥されて、控訴棄却の判決が言い渡された。この判決に対して上告がされたが、上告は棄却された。このY勝訴の判決の確定から3月後、本件移転登記抹消登記手続請求訴訟について、詐欺を理由とする売買契約の取消しを認め、Xの請求を認容する控訴審判決が言い渡された。これに対して、Yは、詐欺を理由とする取消しの主張は別件訴訟において既に排斥され、建物はYの所有であることが確定していると主張して上告。¶001