事実の概要
信販会社Y1(被告・被控訴人・被上告人=上告人)は、X(原告・控訴人・上告人=被上告人)に対し、昭和61年3月、Xの妻が行ったX名義のクレジットカード利用による貸金および立替金請求の各訴えを札幌簡裁に提起した(前訴)。各担当裁判所書記官は、X不在によりX住所での訴状等が送達できなかったため、Xの住所および就業場所等につき調査の上その結果を記載する各照会書をY1に送付した。当時、Xは釧路市内のA社営業所に勤務しつつ、東京都内のB社に長期出張してA社が下請けをしたB社業務に従事し、同年4月20日頃帰る予定であった。A社では、出張中の社員宛て郵便物を出張先に転送し、出張中の社員との連絡を求められたときは連絡先を伝えることになっていた。Y1社員Tは、Xの勤務先がA社であることおよびその所在地を知っていたが、照会書で回答すべきXの就業場所とは、Xが現実に稼働している場所と理解し、以前Xから稼働場所と言われていたCに電話で問い合わせ、Xが本州方面に出張中で上記期日頃帰る、家族はX住所の自宅にいる旨の回答を得ただけで、さらにA社にXの出張先等を確認しなかった。Tは、訴状記載のX住所にXが居住しており、Xの勤務先を調べたがわからない、貸金事件のみにつき、Xは出張で上記期日に帰ってくるが、家族はX住所にいる旨を回答した。各担当書記官は、各回答に基づき、Xの就業場所が不明であると判断し、X住所宛てに各事件の訴状等につき書留郵便による送達(以下「付郵便送達」という)を実施したが、いずれもX不在のため配達できなかった。前訴では、いずれも第一回口頭弁論期日にXが欠席のまま弁論終結の上、各請求認容判決が言い渡され、各判決正本がX住所に送達されてXの妻が受領した。しかし、Xの妻はこれをXに渡さないまま上記各判決は確定した(その後、XはY1に対して28万円を弁済した)。Xは前訴判決に対する再審の訴えを提起したところ、前訴の訴状等の付郵便送達がいずれも無効であり、旧民事訴訟法420条(現338条)1項3号の事由があるが、上訴の追完が可能であったため、同項但書によって再審の訴えをいずれも却下する旨の判決が上告審を経て確定した。¶001