Ⅰ. PhilosophyとReligionの間に

欧米において政教関係を論じる際にしばしば用いられる、広い意味での講学上のコンセプトの一つに、civil religionというものがある。宗教が持つ様々な側面のうち、政治社会の統合や人々のモラルの育成などに役立つ側面に着目し、それを積極的ないし(場合によっては)戦略的に活用するといった意味合いを含む概念である。例えば、奇蹟の問題、あるいは儀式や戒律の問題など、それを信じるか否か、遵守するか否かの判断が各人によって分かれていて、その意味で、万人共通の理性で構築されるべき政治的言説に分断を生じさせ得る諸要素からは、極力間合いを取る。同時にまた、一般人に広く存在する、「神」や「教会堂」といった宗教的シンボルへの畏敬の念や、祭礼の社会的紐帯機能を、政治社会の統合に役立てる。欧米の歴史において、こうしたニュアンスを有するcivil religionは、その主宰者たちにおいて必ずしも伝統的な意味での信仰を伴うとは限らない場合をも含んでいるという点で、「世俗宗教」という訳語も、あるいは可能であろう。仮に理性による知を広くphilosophyと呼ぶとすれば、このphilosophyとreligionとの間のスペクトルのどこかに位置するのが、civil religionと言える1)