事実の概要 

X株式会社(原告・控訴人=被控訴人・上告人)は昭和32年設立の資本金1億円未満の「公開会社でない株式会社」(非公開会社)であり、定款で監査役の権限を会計事項の監査に限定している。Xの使用人AはXが口座を持っていたインターネットバンキングを悪用し、平成19年2月から10年以上の間にわたって多額の会社資金を横領していたが、平成28年7月に銀行からの指摘を受けて当該不正が発覚するところとなった。Y(被告・被控訴人=控訴人・被上告人)は昭和42年から平成24年9月1日までXの監査役(公認会計士・税理士の資格を有していた)であったが、Xの第50期(平成19年5月31日決算)以降監査役退任後も第58期(平成27年5月31日決算)までの間、期末監査に当たりAが偽造した銀行発行の口座残高証明書の写しをもってXの預金残高の確認が行われていた。当初、その写しは巧妙なカラーコピーであったが、途中からは白黒コピーであった。XはYが監査役の任務を怠りAの不正の発見が遅れたことにより会社の損害が拡大したとして、1億1100万円の損害の賠償を請求する訴えを提起した。