FONT SIZE
S
M
L

事実の概要

X(原告・控訴人・上告人)は、関西で成功を収めていたA会社のカステラ製造販売事業の東京進出を考え、昭和35年4月を期して、東京に新会社を設立し、土地店舗を購入して営業を開始する計画をしていた。資金についてはX所有の本件物件を担保に銀行から融資を受ける計画であったが、同年3月、Xの異父兄Y(被告・被控訴人・被上告人)がA会社をめぐるXとの紛争を理由に本件物件の処分禁止仮処分を執行したため、Xは銀行に対し計画どおり担保を提供できず、4月に東京に進出することはできなかった。その後Yは、本案訴訟を提起せず、仮処分の解放手続をした。そこでXは、Yの不当な仮処分の執行によって、東京進出計画が5か月遅延し、営業利益の喪失および信用失墜・精神的苦痛による損害を被った、と主張し、Yの不法行為を理由に本件訴訟を提起した。¶001