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事実の概要

(1)

平成元年7月8日早朝、A(男性)は突然の背部痛で目を覚まし、その後痛みは軽快したが、妻X1の勧めがあり、子X2(X1・X2―原告・控訴人・被上告人)と共に、自動車を自分で運転してY(被告・被控訴人・上告人)の運営するB病院に赴いた。その途中、Aの背部痛が再発し、X2と運転を交代した。Aは上背部(中央部分)痛および心か部痛を主訴とし、触診所見は心か部に圧痛が認められたものの、心雑音、不整脈等の異常は認められなかった。B病院のC医師は症状の発現部位および経過等から第1次的に急性すい炎、第2次的に狭心症を疑った。C医師は看護婦に鎮痛剤の筋肉内注射を指示し、Aを外来診察室の向かいの部屋に移動させた上で、看護婦に急性すい炎に対する薬を加えた点滴を静注させた。Aは点滴中に突然痛みを訴えて身体をよじらせ、大きくけいれんした後、すぐにいびきをかき、深い眠りについているような状態となった。C医師はすぐに駆け付けたが、ほどなくAの呼吸は停止し、Aの脈は触知可能だが極めて微弱であった。C医師はAを集中治療室に搬入し、他の医師も加わって各種のそ生術を試みたが、結局Aは死亡した。Aの死因は不安定型狭心症から切迫性急性心筋こうそくに至り心不全を来したと解された。¶001