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事実の概要
X(原告・控訴人・被上告人)は、昭和55年3月20日、Aら所有の土地上に建物を有するY(被告・被控訴人・上告人)から建物の所有権および敷地の賃借権を買い受けて、その代金として650万円を支払った。昭和56年10月22日、台風に伴う大雨によって土地を囲う擁壁に傾斜、亀裂が生じ、敷地の一部が沈下し、建物が倒壊する危険が生じた。東京都北区長やXは、同年11月4日、Aらに安全上必要な措置を採るように勧告や申入れをしたが、Aらが何らの措置も採らなかったことから、Xは、倒壊の危険を避けるために本件建物を取り壊した。こうした危険な状態が発生したのは、擁壁に通常設けられるべき水抜き穴がなく、土中の雨水の圧力に大谷石の擁壁が耐えきれなかったことにあった。Xは、建物を買い受けた際、擁壁の構造的欠陥についてYから何の説明も受けておらず、このような重大な結果の発生を通常人としてまったく予想できなかったとして、賃借権に隠れたる瑕疵があったことを理由に、昭和57年7月31日、平成29年民法(債権法)改正前(以下、「改正前」という)民法570条・566条1項に基づいてYに対して売買契約を解除し代金返還ならびに損害賠償請求をしたのが、本件である。¶001