事実の概要
Aは、Bに対して、合計1183万余円の売掛代金債権(以下「本件債権」という)を有していた。X(第2事件原告=第3事件被告・被控訴人・上告人)は、昭和62年12月9日、Aに対する貸金債権の代物弁済として本件債権を譲り受け、Aは、翌10日到達の内容証明郵便によって上記債権譲渡をBに通知した。しかし、本件債権には譲渡禁止特約が付され、Xは特約の存在につき悪意またはそれを知らないことにつき重大な過失があった。他方、Y(国―第2事件被告=第3事件原告・控訴人・被上告人)は、同月11日および22日、本件債権に対して滞納処分による差押えを行い、差押通知書は、それぞれの日に、Bに送達された。さらに、本件債権に対しては、同月21日、Cによる仮差押えの執行がなされ、また、昭和63年1月11日には、Xの強制執行による差押えがなされた。そこでBは、同月29日、債権者の不確知および滞納処分による差押えと強制執行による差押え等が競合したことを理由に供託をし、その際に、AからXへの債権譲渡を承諾した。そして、XのYに対する供託金還付請求権の確認請求(第2事件)、および、YのXに対する供託金還付請求権の取立権の確認請求(第3事件)がなされ、これらが併合されたのが本件である。第1審はXの請求を認容した。しかるに原審は、譲渡禁止特約がある債権の譲渡につき債務者が承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、その対抗力は、承諾の時まで遡及するにとどまるとし、Bの承諾時までに対抗要件を備えたYの差押えが優先するとして、Xの請求を棄却した。X上告。¶001