事実の概要
X社(原告・被控訴人・被上告人)は、昭和19年頃、所有する本件土地等をAに賃貸した。同20年2月23日、Aは、B社設立に際しその取締役に就任し、同じ頃B社に本件土地等を転貸した。B社は、転借した土地を造船工事場および船舶修理場として使用していた。X社は、AからB社への転貸を承諾した。同20年8月6日の原爆被災によりB社の事務所および工場は破損し、Aは死亡した。B社の代表取締役であったCは、B社の株主であったY(被告・控訴人・上告人)に持株全部を譲渡しB社の経営を一任して郷里に引き揚げ、さらに残りの取締役2名も昭和20年末頃には事実上取締役を辞任して持株全部をYに譲渡したので、YはB社の株式の大部分を所有してB社の実権を掌握するに至った。同22年初頭頃、Yは他5名と共に発起人となって新たにD社を設立すること、本件土地等およびその土地上のB社所有施設を使って木造船の建造および修理等をすることを計画した。同年4、5月頃には、設立前のD社名義での漁船の建造が開始され、X社に無断で本件土地が使用された。本件土地の無断使用に不安を感じたX社は、同22年6月7日頃、相続によってAの地位を包括承継したEとの間で本件土地等の賃貸借契約を合意解約し、その頃Yに本件土地の明渡しを求めるに至った。この土地使用をめぐる紛争が原因となり同22年11月頃にはD社は設立目的を達しえないことになった。その後、Yは同23年1月14日にB社の取締役に、同24年10月20日に代表取締役に就任した。¶001