事実の概要
昭和46年ころ、Aは、自身の所有地を東西3区画ずつ計6区画の宅地とその中央を南北に貫く通路として造成し、後に各部分に分筆した。この通路の北端は、公道に通じている。昭和49年9月、Aは、6区画のうち西側中央の土地(「甲地」)をX(原告・被控訴人=附帯控訴人・被上告人)に売却した。その際、AとXは、通路部分の北側半分に相当する土地(「本件係争地」)に要役地を甲地とする無償かつ無期限の通行地役権を黙示に設定した。Xは、以後、本件係争地を甲地のための通路として継続的に使用しているが、地役権設定登記はしていない。昭和50年1月ころ、Aは6区画のうち東側中央・南東側・南西側と通路部分とをBに売却し、これらの土地は昭和59年10月に一筆の土地(「乙地」)となった。AとBは、売買の際、BがAから上記通行地役権の設定者の地位を承継する黙示の合意をしていた。Bは、購入後直ちに、本件係争地を除く部分に自宅を建築し、本件係争地を舗装して公道に出入りするための通路とした。昭和58年、Xは、甲地に、東側に駐車場と玄関のある自宅を建築し、本件係争地を自動車または徒歩で通行して公道に出入りするようになったが、Bがこれに異議を述べたことはなかった。平成3年7月、Bは乙地をY(被告・控訴人=附帯被控訴人・上告人)に売却したが、YがBから通行地役権設定者の地位を承継するとの合意はされなかった。Yは、乙地を購入するに際し、現にXが本件係争地を通路として利用していることを認識していたが、本件係争地の通行権の有無についてXに確認しなかった。Yが、乙地の取得後まもなく、本件係争地上のXの通行を妨害するようになったため、Xは、本件係争地上に通行地役権を有することの確認等を求めて提訴した。¶001