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事実の概要

X(原告・控訴人・被上告人)は、昭和33年4月17日、訴外Aから12万円を借り受けるにあたり、この貸金返還債務の担保として、自己所有の土地・建物にAのために抵当権を設定することとし、その登記手続のため、これらの土地・建物の権利証、X名義の白紙委任状2通、および印鑑証明書をAに交付した。¶001

ところが、Aは、自己のために抵当権設定登記手続をせず、訴外Bを介して金融を得る目的で、これら権利証・白紙委任状・印鑑証明書を訴外Cに交付した。Cは電気器具の販売をしていたが、昭和33年4月20日、電気器具の卸商であるY(被告・被控訴人・上告人)との間で電気器具の継続的商品取引契約を結ぶこととなった。その際、CはXから何ら委任を受けていないにもかかわらず、上記権利証・白紙委任状・印鑑証明書をYに示し、自らがXの友人であってXから承諾を得ている旨をYに告げ、その言を信じたYとの間で、前記の継続的商品取引契約から生ずる将来の債務の担保として、本件土地・建物について、根抵当権設定契約およびCの債務不履行を停止条件とする代物弁済契約を締結し、上記各書類をYに交付した。Yは、これらの書類を用いて、同年5月14日、本件土地・建物について根抵当権設定登記および所有権移転請求権保全仮登記をした。¶002