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事実の概要

有限会社A土木は、昭和51年12月21日にY保険会社(被告・控訴人・上告人)との間で、A社が所有し自己のために運行の用に供する普通乗用自動車を被保険自動車、記名被保険者をA社として、自家用自動車保険普通保険約款(昭和53年11月改訂前のもの)に基づき保険契約を締結していた。昭和52年3月1日夜、A社代表取締役の長男で専務と呼ばれていたBおよび作業員Cは、作業員Dと飯場で飲酒中に口論となり、Dは、BとCに暴行を加えられた上、Bに本件自動車で轢かれ死亡した。昭和53年10月26日に言い渡された判決によってBの傷害致死罪が確定し、その直後の10月下旬頃(事故発生から1年8か月後)、A社は初めてY社に対して本件事故の発生について通知をした。その後、昭和54年5月、Dの相続人である妻X1および子X2・X3(原告・被控訴人・被上告人)は、A社、BおよびCに対して損害賠償請求訴訟を提起し、昭和55年4月30日付け訴訟告知書によりY社に対して訴訟告知を行ったが、Y社は訴訟参加をせず、昭和56年7月20日にXらの請求を認容する判決が言い渡され、確定した。A社らが無資力であったため、Xらは、債権者代位権に基づきA社の保険金請求権を代位行使して、Y社に対し保険金請求訴訟を提起した。これに対し、Y社は、本件約款一般条項14条において「賠償責任条項にいう対人事故の場合において、当会社が保険契約者または被保険者から第12条第2号(事故の通知)の規定に定める通知を受けることなく、事故の発生の日から60日を経過したときは、当会社は、その事故にかかわる損害をてん補しません。ただし、保険契約者または被保険者が、過失がなくて事故の発生を知らなかったとき、またはやむを得ない事由により、前記の期間内に通知できなかったときは、このかぎりでありません」と定められていること等を根拠として、保険金支払義務の免責を主張した。¶001