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Ⅰ はじめに
2019年2月に全国各地で一斉提訴された一連の同性婚訴訟(以下、「本件訴訟」とする)は社会から注目を集めたこともあり、同性婚禁止の憲法適合性は憲法学においても重要な論点の一つとなった。2023年7月の時点で、札幌、大阪、東京(1次)、名古屋、福岡、東京(2次)の計6つの訴訟のうち、東京(2次)を除く5つの地裁で判決が下されている。その内訳は、違憲判決が2つ(札幌、名古屋)、違憲状態判決が2つ(東京、福岡)、合憲判決が1つ(大阪)というように判断が分かれている。加えて、違憲判決の中でも、札幌地裁判決(札幌地判令和3・3・17判時2487号3頁)は憲法14条1項のみ、名古屋地裁判決(名古屋地判令和5・5・30 LEX/DB 25595224)は憲法14条1項及び24条2項につき違憲判断を下すなど各判決それぞれ特徴を有している。なお、判決が下された5つの訴訟全てが、同性婚を認めていない民法及び戸籍法の諸規定(以下、「本件諸規定」とする)が憲法違反であるにも拘わらず、国会が必要な立法措置を講じていないことに対し国家賠償を求めた訴訟であったが、いずれの判決においても当該請求は棄却された。本件訴訟における訴訟形態や国家賠償に関する論点も重要なテーマになり得るが、本稿では憲法24条及び14条1項の論点に絞って各判決の比較検討を行う(なお、本件訴訟では13条違反についても主張がなされているが、いずれの判決においても簡単に退けられているため取り上げない)。¶001