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Ⅰ はじめに

合衆国最高裁判所(以下「最高裁」)は2023年5月18日、Andy Warholという稀代のアーティストによるアプロプリエーションと米国著作権法のフェア・ユースをめぐり、注目すべき判決1)を言い渡した。本稿では、今後フェア・ユースを論じる際に必ずというほど参照されることになるであろうこの判決のポイントを紹介するとともに、考えられる今後の影響について簡潔にコメントしたい。¶001

Ⅱ 事案の概要

1984年、Vanity Fairは、写真家Lynn Goldsmith(以下「Y」)が撮影したPrinceのポートレート写真(図1。以下「本件写真」2))をイラストの素材として使用するライセンスをYから得た。使用範囲は、制作したイラストをVanity Fair 1984年11月号のPrinceに関する記事の中で掲載することに限定され、クレジットの記載も義務付けられていた。Vanity Fairの依頼を受けたAndy Warhol(以下「Warhol」)は、本件写真を素材としてシルクスクリーンプリント(図2。以下「Purple Prince」)を制作した。Purple Princeは予定どおりVanity Fair 1984年11月号に掲載された。¶002